生体内の細胞は、常に様々な機械的刺激を受けています。細胞が、伸展、圧縮、ズリ応力、静水圧などの機械的刺激を受けると、メカノレセプターが刺激され、細胞内にそのシグナルが伝達されることにより細胞活動に影響を与えると考えられています。
しかし、通常の培養条件下(静的培養)では、このような刺激は存在しません。弊社の培養細胞伸展システムは細胞に伸縮、圧縮刺激を加えながら培養することで、生体内に近い環境を与えるため、静的培養とは異なる細胞の変化・応答が観察できます。接着性の種々の細胞に広く用いることができます。
伸展率8通り、頻度8通りの組み合わせにより、計64通りのストレッチパターンが可能。
細胞の固定、蛍光イメージングなど様々な処理が可能な特殊シリコン膜チャンバーを採用
すべての細胞に均一な負荷、かつ伸展させる軸方向以外への二次的負荷が微弱
本体は高精度・高トルクステッピングモーターにより 超低速から高速まで安定した動きが可能。優れたシリコン膜チャンバーとの組み合わせにより、再現性の高いストレッチ刺激を負荷できます。
細胞外マトリックスでコートしたチャンバーに細胞を播種し、CO2インキュベーター内で伸展・圧縮をしながら細胞培養を実施。顕微鏡ステージ上に取り付けるタイプであれば、負荷をかけながらリアルタイムに細胞の変化を観察できます。
項目 | 生化学的アプローチ | 細胞生物学的アプローチ | |||
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モデル | STB-100-04/10 | STB-1400-04/10 | STB-150 | STB-190-XY | STB-1500 |
アプリケーション | • 遺伝子発現、タンパク質発現 細胞骨格 細胞形態 長時間刺激が可能(hours-days) 持続的伸展用 | 遺伝子発現、タンパク質発現 細胞骨格 細胞形態 複数チャンバーを培養可能 長時間刺激が可能(hours-days) | 細胞骨格 細胞形態 イオン動態(Ca²+ influx) NO 産生 リアルタイム細胞観察 短時間刺激用 ( 連続15-20 分まで) |
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伸展方向 | 一軸 | 一軸 | 一軸 | 二軸 | 一軸 |
チャンバー数 | 1/1 | 8/6 | 1 | ||
培養面積 | 4cm²/10cm² | 4cm²/10cm² | 4cm² | ||
顕微鏡に設置 | - | × | 〇 | ||
インキュベーター | シャーレに入れて使用 | 〇 | - | - | 〇※ |
ストレッチパターン | 手動・持続性 | 自動・64パターン | 自動・64パターン |
※ 他社製マイクロインキュベーターへの組み込み対応が可能です。
細胞伸展(さいぼうしんてん、cell stretching)は、細胞が機械的な力によって物理的に引き伸ばされるプロセスを指します。このプロセスは、細胞の形状、機能、遺伝子発現、および細胞間相互作用に影響を与える重要なメカニズムとして研究されています。細胞伸展は、組織の成長や修復、再生医療、そして病気の進行など、さまざまな生理学的および病理学的プロセスに関与しています。
組織工学において、細胞を適切に引き伸ばすことで、人工組織や器官の形成を促進できます。例えば、心筋細胞を引き伸ばすことで、心臓組織の再生を目指す研究があります。
細胞がどのように機械的な力に応答するかを理解することで、力学的刺激が細胞の構造や機能に与える影響を明らかにします。これは、運動や外傷、リハビリテーションの研究にも関連しています。
癌細胞や他の疾患細胞における異常な機械的応答を研究することで、病気の進行メカニズムや新しい治療法の開発に繋がります。例えば、腫瘍細胞の硬さや伸展応答を調べることで、転移のメカニズムを理解します。
細胞伸展が幹細胞の分化や特定の細胞型への成熟にどのように影響するかを研究することは、細胞治療や組織再生において重要です。
細胞伸展は、細胞生物学、バイオメカニクス、再生医療などの多くの分野で重要な研究テーマです。細胞がどのように力に応答し、その結果としてどのような変化が生じるかを理解することは、基礎研究から応用研究まで幅広く役立ちます。
細胞伸展装置(さいぼうしんてんそうち、cell stretching device)は、培養された細胞に機械的な引き伸ばし(伸展)力を加えるための実験装置です。この装置は、細胞の生理学的応答を研究するために用いられ、再生医療や生体力学の研究において重要な役割を果たします。
細胞伸展装置は、以下のような研究や応用に利用されています。
細胞がどのように機械的な力に応答するかを調べることで、細胞骨格の再構築やシグナル伝達経路の活性化などのメカニズムを理解します。
生体組織の再生を目指す研究で、細胞に適切な力を加えることで、細胞の増殖や分化を促進する方法を開発します。例えば、心筋細胞や血管内皮細胞に対する伸展刺激は、心臓や血管組織の再生に役立ちます。
疾患モデルの研究において、細胞伸展装置を使用して病態を再現し、病気の進行や治療法の効果を評価します。例えば、肺の拡張と収縮を模倣することで、呼吸器疾患の研究が行われます。
細胞を伸展させることで、再生医療における細胞治療の効果を高める研究が進められています。例えば、幹細胞に適切な力を加えることで、特定の細胞型への分化を誘導することができます。
基本的な細胞生物学の理解を深めるために、細胞の物理的特性や機械的特性を研究します。
新薬の開発や化学物質の毒性評価において、細胞が力学的環境でどのように応答するかを調べます。
細胞伸展装置を使用する目的は、細胞が機械的な力にどのように応答するかを研究するためです。これにより、細胞の形状、機能、遺伝子発現、および細胞間相互作用に及ぼす影響を理解し、さまざまな生理学的および病理学的プロセスの理解を深めることができます。
細胞伸展装置は、さまざまな研究分野で具体的なアプリケーションとして利用されています。以下が、そのいくつかの具体的なアプリケーション例です。
心筋細胞の研究: 心筋細胞を周期的に伸展させることで、心筋の収縮機能や力学的応答を研究します。これにより、心不全やその他の心血管疾患の治療法を開発するためのデータを得ることができます。
血管内皮細胞の研究: 血管内皮細胞に対して血流を模倣した力を加えることで、動脈硬化や高血圧のメカニズムを理解し、新しい治療法を開発します。
骨芽細胞の伸展: 骨芽細胞を伸展させることで、骨形成のメカニズムを研究し、骨折治療や骨再生のための新しい方法を探ります。
軟骨細胞の再生: 関節軟骨の再生を促進するために、軟骨細胞を機械的に刺激し、関節疾患の治療法を開発します。
肺胞上皮細胞の伸展: 呼吸運動を模倣するために肺胞上皮細胞を周期的に伸展させ、肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患や肺線維症)の研究に利用します。
喘息モデル: 気道上皮細胞を伸展させて、気道の過敏性や収縮反応を研究し、喘息の治療法を開発します。
腫瘍細胞の力学的応答: がん細胞に対して伸展刺激を加え、腫瘍の成長、転移、治療抵抗性のメカニズムを研究します。これにより、新しい抗がん剤や治療戦略の開発に役立ちます。
腫瘍微小環境のシミュレーション: 腫瘍細胞と周囲の正常細胞の相互作用を理解するために、力学的な環境を再現し、がんの進展や治療効果を調査します。
神経細胞の成長: 神経細胞を伸展させて、軸索の伸長やシナプス形成に及ぼす力学的刺激の影響を研究します。これは、神経損傷や再生のメカニズムの理解に役立ちます。
脳のモデル化: 脳の組織の力学的特性を模倣するために、神経細胞を伸展させ、脳の発達や疾患モデルの研究に利用します。
薬剤の力学的効果の評価: 細胞に対して機械的な力を加えた状態で新薬を投与し、その効果や副作用を評価します。これにより、薬剤の力学的な影響を考慮した安全性評価が可能になります。
化学物質の毒性評価: 化学物質が細胞の力学的応答に与える影響を調査し、その毒性を評価します。これにより、化学物質の安全性をより詳細に評価できます。
胚発生の力学的影響: 胚の発生過程で細胞に加わる力学的な影響を研究し、組織や器官の発達における力学的要素の役割を解明します。
幹細胞分化: 伸展刺激を加えることで幹細胞の分化過程を調査し、特定の細胞型への分化を誘導する方法を開発します。
これらのアプリケーション例は、細胞伸展装置の多様な利用可能性を示しており、各分野での重要な研究成果を支えています。これにより、細胞の力学的環境が生理学的および病理学的プロセスに与える影響を詳細に理解し、新しい治療法や技術の開発に貢献しています。